コウモリも出てきて
コウモリも出てきて浜の夕涼み。誰の句かは知らないが、いい句だなと私は長年思っていた。でも、今回この文章を書くにあたって調べてみたら、このコウモリというのは市川団十郎のことで、この後に「いなさぬ(帰らさない)いなさぬ、いつまでも」と続くお座敷歌だということが分かった。でも、それを抜きにして俳句として読んでも、いい句だと私は今も思う。自然と共生してきた素朴な生活実感が感じられるように思うのだ。
私がコウモリに興味を持ったのは、ここしばらく、夕方、家の前でコウモリを見ることが多いからである。周囲が暗くなりかかった頃、アゲハチョウより少し大きめの真っ黒な生き物がヒラヒラと飛んでいるのである。アゲハチョウがこんなに暗くなってから飛ぶはずがないし、鳥とは飛び方が違う。いったい何だろうと長い間不思議に思っていたのだが、それがコウモリだと気づいたのは2年ほど前のことだった。
私が住んでいる住宅街では、家々の間に幅も深さも1.5メートル程の排水路が走っているのだが、そこに架けられた橋の下にコウモリが巣を作っているので、駆除するというお知らせが来たのだ。それを見てあれはコウモリだと気づいたのだった。
コウモリはさまざまな病原菌を媒介するということだし、その外見も不気味だ。吸血鬼ドラキュラも、もとはコウモリである。そんなことから嫌われるのだろうし、それは仕方のないことだが、日本にはコウモリを吉兆とする見方もあったらしい。先にも書いた市川団十郎の家紋がコウモリだったのはそのためだろう。
この時期、夕空を飛び回るコウモリには風情がある。コウモリも出てきて里の夕涼み、と、しゃれてみたい。
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