2023/06/30

                       6月の記事


二羽の鳥       …  家の前の光ケーブルの二羽の鳥が結ばれそうだ。

二羽の鳥(2)    …      二羽の鳥が協力して巣を作り始めた。

二羽の鳥(3)    …  二羽の鳥は来なくなった。巣を放棄したのだろうか。

Bing検索     …  Bing検索で二羽の鳥はヒヨドリらしいと分かった。

鷺の異変       …  我が家の上を飛んでいく白鷺の数が激変した。

トンビとアドバルーン …  トンビのみごとな旋回に見とれてしまった

「申す」ということば …      「申す」は尊敬語ではない

「指導」ということば …  指導って命令することですか 相手をけなすことですか

日本語は正しく使うべし…      奪うって何ですか? 災害被害者は命を奪われたのですか?

自虐の世代      …  川柳が老人の自虐になっているのは残念だ

同性婚反対      …  結婚は男女に与えられた子育ての「特権」を守る制度だ

袋だたきの好きな国  …  最近また市川猿之介への袋だたきが始まった

中田ケン子さん    …  サンタナ学園の園長、中田ケン子さんは魅力的な人だ

千代女のウソ     …  朝顔につるべ取られてもらい水 ホント?

Jアラート大騒動   …  Jアラートを真に受けたら大混乱になる

Jアラート大騒動(2)…  Jアラートは単なる反北朝鮮キャンペーンだ

国連決議とは?    …   北朝鮮のミサイル発射はどのように国連決議違反なの?

患者様ということば  …     患者様ではなく患者さんと呼んで欲しい

お説教屋さん              …          どんなことでもお説教に結びつけたい人たちがいる

マークⅡ                    …          吉田拓郎のマークⅡは人生を歌っていた

写真とイメージ           …          ブリンケン国務長官と習近平の写真に衝撃を受けた

男と女、雄と雌           …          男性育児休暇というが、私たちは雄と雌だ

二羽の鳥(4)           …          ついにヒヨドリは戻ってこなかった

肉薄か肉迫か              …          私は「肉薄」より「肉迫」の方がよいと思う

犯罪報道は要らない     …          犯罪報道は止めてくれ、もう見たくない

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                                         お説教屋さん


 以前私が高校の教員をしていた頃、小、中、高の先生の合同の研修会があって、そこで小学校の先生から話を聞く機会があった。そのとき私が違和感を感じたのは、小学校の先生の中に、国語で扱う文章や歴史的なできごとなどをいかにして道徳的な教訓に結びつけるかという話をする人も多かったことだ。そういう先生はどんな教材も、最終的には道徳的な教訓話に結びつけるのが教育だと信じて疑わないようだったのだ。

 高校にはそういう先生は少ない。と思っていたら、ある先生が卒業文集に「あなた達はこの世は無常だから今を大切にしなければならないことを古典で学びました。今後もそれを忘れずに生きていってください」と書いているのを見つけて、私は「えっ?」と驚いてしまった。たしかに、平家物語などの古典では、「無常」、つまり世の中のすべてが流転するということは大きなテーマだ。しかし私の理解では、それらの作品は無常を嘆いているか、斜に構えて世相を見ているだけで「だから今を大切に生きろ」とは言っていない。

 この世が無常であるという自覚が、「今を大切に」という思いにつながることもあるかもしれないが、それは「今さえよければ」という刹那主義と背中合わせだ。さらに、「どうせ無常なのなら、どう生きても同じだ」という投げやりな思いにつながるかもしれない。でもこの先生はどの教材もすべて「この瞬間を無駄にしないで」という教訓に結びつけて授業をしてきたのだろう。

 素直な若者の中にはさまざまな教訓を受け入れて、それに従って生きるが望ましいことだと思い込んでいる者も多い。でも、それは若者の知性を眠らせ、精神を空洞化させることだと私は思っている。

患者様ということば     お説教屋さん         マークⅡ          写真とイメージ                  

 男と女、雄と雌           二羽の鳥(4)         肉薄か肉迫か        犯罪報道は要らない  

二羽の鳥     二羽の鳥(2)      二羽の鳥(3)      Bing検索  

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日本語は正しく使うべし     自虐の世代    同性婚反対   袋だたきの好きな国

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国連決議とは?

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                                    「患者様」ということば


 私は5年前に大腿骨骨折、4年前には悪性リンパ腫で、それぞれ1ヶ月ほど入院した。大腿骨の手術をしてくれた先生も、悪性リンパ腫の治療をしてくれた先生も、看護師や理学療法士などのスタッフもたいへん親切で私にとってはいい入院生活だったが、入院中に院内で見聞きした「患者様」ということばには違和感を感じた。

 それが「患者さん」ならよかったと思うのだが、「患者様」と「様」を付けることで、病院スタッフとの間に壁を築かれてしまっているように感じたからだ。入院していると、自分の体のこと、病院の待遇のことなど、日常会話の中で気軽に話したいことがたくさんある。ところが「様」をつけて祭り上げられるとそうたやすく話せないような気分にもなるのだ。慇懃無礼ということばがあるが、そんな感じなのだ。

 第2に「様」はお店などで使う「お客様」と同じ「様」だから、病院は患者を「客」、つまりは「金儲けの手段・対象」と見ているかのように感じられてしまったからだ。病気を持って病院を訪れる患者は、お店で品物やサービスを買う「客」とは全く違う存在なのに。

 ただし、「患者様」ということばは院内の張り紙で見たり院内放送で聞いたりするだけで、私自身がそう呼ばれたわけではない。ただ、「患者」に「様」を付けると上に書いたようなニュアンスも出てくるから、そうすべきではないと感じた。

 おそらく、患者の中には病院に理不尽なクレームを付ける人もいて、病院としては患者を尊重しているという姿勢を示すために「様」を使い始めたのだろう。とすれば、その責任は患者側にもあることになるが、「様」で呼ばれて矛を収めるクレーマーはいないだろう。

患者様ということば     お説教屋さん         マークⅡ          写真とイメージ                  

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                                        写真とイメージ


 今日(6月20日)の毎日新聞朝刊に載っている中国の習近平国家主席とアメニカのブリンケン国務長官の写真を見て驚いた。今、中国を訪問しているブリンケン国務長官が習近平主席と会談したそうで、その前か後に二人が握手しているところを撮った写真だ。この写真では体格の大きい習近平氏が微笑みを浮かべてブリンケン氏を見下ろしており、ブリンケン氏はまるで生徒のように習近平氏を見上げる構図になっている。

 これはアメリカのAP通信が配信した写真である。AP通信がこの写真だけを配信したのか、多数の写真を配信した中で新聞社がこの写真を選んだのかは分からないが、この写真を見る人は中国の方が格上だという印象を受けるだろう。今回、中国はブリンケン国務長官を冷遇したという報道もあるから、それを象徴する意味でこの写真が選ばれたのかもしれないが、もし中国でもこの写真が公表されたなら、中国人は喜んだだろう。

 戦後、昭和天皇とマッカーサー元帥が会談した直後に二人が並んで撮った写真では、天皇の身長はマッカーサーの肩くらいまでしかなく、日本人はこの写真にショックを受けたという。神聖な存在であり、決して威厳を傷つけられることのなかった天皇がこんな写真を撮られ、そして戦前なら不敬罪にもなりかねないその写真が堂々と新聞に載ったのだ。これは、おそらく、アメリカによる日本人教育の一環だったのだろう。

 写真は文章以上にものを言う。ものを言うだけではなく、情緒に訴えかけもする。しかし写真は必ずしも「真実」を写したものとは限らない。それは今に始まったことではないが、誰でも簡単に写真を撮り、AIで加工できるようになった今、特に心しておきたいところだ。

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                                        マークⅡ


 日本のフォークソングの中心人物だった吉田拓郎が昨年引退宣言をした。彼は私より3才年上だが、ほぼ同じ時代を生きる人として、いつも私の気になる存在だった。その吉田拓郎の初期の曲に「マークⅡ」がある。

 「さよならが言えないでどこまでも歩いたね、街灯りさえ消えて足音が寂しいよ」で始まるこの曲は、何かの事情で別れなければならない恋人同士の、痛切な思いを歌った歌である。「分かってくれるただ一人の君を離したくないのに冷たいこの世界」という歌詞もある。この曲にはいくつかのバージョンがあるが、吉田拓郎が泣き出しそうな声で歌っているライブ盤が、私は好きだ。

  この当時、別れを歌った曲はいくらでもあった。しかし、この曲には「また会う時は大人になっているだろう」という歌詞があって、私はこの部分に注目したのだった。若い2人は同じ価値観、同じ感性を共有して愛し合っている。いわば、世間を知らないがゆえの純粋な愛だ。しかし、今別れれば2人は別々の経験をしながら生きてゆき、別々の感性を身につけていくことになる。だから再び会うことがあったとしても、今と同じように互いを分かり合うことができるという保証はない。すれ違いになるかもしれないのだ。この歌には人間がこの世で生きていくということへの底知れぬ不安のような感覚も込められている。私はそれに惹かれたのだった。

 この歌には、さらに「年老いた男が川面を見つめて時の流れを知る日が来るだろうか」という歌詞もある。吉田拓郎は恋多き人でもあったが、実際に川面を見つめて時の流れを感じることもあったのだろうか。当時はまだ見ぬ未来だったものが、今では過ぎ去った過去になっている。それを思うと心の空洞を見るような思いがする。

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                                     男と女、雄と雌


 最近、男性も育児休暇を取るべきだという論議が多く、育児休暇の取得率がよく話題になるが、私はこのような風潮に疑問を感じている。男性も育児休暇を取れるような条件整備をするのが必要だということに異論はないのだが、実際に男女がどのように育児を分担するかということはその夫婦が決めることで、男性に育児休暇を強制すべきではない。それに、私たちは男女である前に、雄と雌だということも忘れてはならない。

 たとえば鳥の場合、雌は卵を暖め、雄はそこへエサを運ぶという種類が多いらしい。これを人間に当てはめれば、女性が育児に専念し、男性は外で働くことに相当する。男は女よりも体も大きく力も強いから、力仕事に向いている。それが雄と雌の違いだ。

 それに妊娠し出産するのは女性である。妊娠中や出産直後の女性の体にかかる大きな負担のケアも必要で、そのためには育児休暇も有効だろう。また、赤ちゃんは母乳で育てるのがベストだと私は思っているが、赤ちゃんに母乳を与えることができるのは女性だ。そういう点からも、女性が育児の中心的な役割を担い、男性はそれをサポートするのが望ましいと私は思っている。

 ただ、もっぱら女性が育児休暇を取ることになれば、女性にとってはキャリアを積む上で不利になるし、職場の側からすれば女性に重要な仕事は任せることはできないということにもなりかねない。だから問題はそんな中でどうして男性と女性の社会的な平等を保証するかということになるが、その解決は雄と雌という男女の本質的な違いに目をつぶることによってではなく、それを認めた上で、女性の特性を生かすことのできるような就業構造を作ることだと思う。

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二羽の鳥(4)


 私は前回の文章で二羽の鳥が私の家の玄関前の巣を放棄したらしいこと、そのうちの一羽と思われる鳥が少し離れた電線に毎日留まっていることを書いた。しかし、それもあの文章を書いた日までで、その後、家の近くでそれらしい鳥の姿を見ることはなくなった。

 それでもどこかから、ピーッ、ピーッという声は聞こえてくる。私の家から百メートルほど離れたところには神社の森があり、住宅街の中には松や檜、あるいは果樹などの庭木を植えている家が結構あるので、そのどこかからだとは思うが場所はよく分からない。

 Bingの情報によれば、ヒヨドリの場合、交尾から産卵までは数日から一週間ほどで、産卵から約2週間で孵化し、その後、巣立ちまではさらに10日ほどかかるのだそうだ。とするならば、そして、もし私が見た初日に交尾していたとすれば、私が二羽の鳥を最後に見たしばらく後に産卵の日を迎えていたことになる。私が見た時はまだ一羽が枯れ枝をくわえていたのだから、別のところに新しい巣を作る余裕はなかったはずだ。では、どこで産卵したのだろうか。仮に巣のないところで卵を産んだのだとすれば、その後、卵を暖めることもできず、当然、孵化もしていないのだろう。そう考えると、私の軽率さが悔やまれ、心が痛む。

 そして今日、私はついにモッコウバラの茂みから巣を取り外した。そして驚いた。外形はお椀のようなのだが、その中にはテニスボールがピッタリと納まるくらいの半球形の空洞があった。そしてその半球面には乾燥した干し草がまるで繊細な織物のように織り込まれていたのである。鳥でもこれだけのものを作るのだと思うと、ますますあの二羽の鳥が愛おしくなったのだった。

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                                        肉薄か肉迫か


 たまたま見たテレビで、アナウンサーが失敗談を話していた。その中の一人は「肉薄」ということばを「にくうす」と読んで笑われたことがあったという。もちろん正しい読み方は「にくはく」で、放送原稿の流れからすれば「にくうす」と読むはずはなく、お粗末な話ではあるが、たとえばこれが熟語の読みを問われた時ならば、私もおそらく「にくうす」と答えるだろう。なぜなら、何かの近くに迫るという意味で「にくはく」という場合、私は必ず「肉迫」と書くからだ。

 辞書で調べてみたら「肉薄」も「肉迫」も書き方としては正しいのだそうだ。しかし私の知る限り「薄」という漢字は「薄い」という形容詞的な意味だから、動作を表すことばとして使う場合、「肉薄」は不適切だと思う。それに対して「迫」は文字通り「迫る」という動詞だから「肉迫」にはぐいぐいと迫っていくというダイナミックなイメージがある。私の勝手な解釈だが、「にくはく」の本来の漢字は「肉迫」で、「肉薄」は誰かが間違って書いたのが定着したのではなかろうか。一方、「肉薄」を「にくうす」と読めば、たとえば「肉薄の水道管」のように、ものの厚み(肉)が薄いという意味で普段からよく使う日本語になるのである。

 ところで、このことを考えていて、もう一つ、よく似た例を思い出した。それはもう50年くらい前「007危機一髪」という映画がヒットした時のことだ。そのとき、何人かの若者が間違えて「危機一発」と書いたのを、ある有名な学者が指摘して「最近の若者は漢字力が低下している」と嘆いて見せたのだ。私はそのとき、「危機一発の方が絶対よい」と思った。「一発」の方が危険が現実化するダイナミックなイメージが出るからだ。

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日本語は正しく使うべし     自虐の世代    同性婚反対   袋だたきの好きな国

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                                   犯罪報道は要らない


 最近、痛ましい事件の報道が相次いでいる。昨日の新聞には、6才の子どもの遺体がスーツケースに入れて捨てられ、それに先立って、その子の50代の祖母が母親ら4人によって殴打され、自宅の押し入れに監禁されていたというニュースが載っていた。その2,3日前には幼い子どもに熱湯をかけ続けて死亡させた男の裁判が始まったというニュースがあった。

 私はこの種のニュースを聞くと、その凄惨な場面が脳裏に浮かんで耐えられない思いがするので、そういうニュースになるとテレビを消してしまうか、他の部屋に逃げて見ないようにしている。そして、テレビ局はどうしてこんなニュースを放送するのだろうか、他の人たちは平気で見ていられるのだろうかと思う。私にとって、その種のニュースは精神的な拷問に等しいのだ。

 しかし、私が「どうして放送するのか?」と聞けば、テレビ局の人は「すべてのできごとをありのままに放送するのが使命だから」とか、「今後このようなことが起こらない社会にすることを視聴者に訴えるため」とか答えるのだろう。どちらも正論だから、反論はしにくい。でも、実際は視聴者の好奇心をかき立てて、視聴率を上げるためではないかと思う。現実社会の犯罪が、まるでエンタテインメントのように扱われているのである。

 本当に社会に警鐘を鳴らすのが目的なら、事件のたびに残酷なイメージをかき立てるような犯行の詳細を伝えなくても、犯罪の動向をまとめて何ヶ月かに1回放送すれば済むことだ。以前、私は裁判官として長年こうした事件の裁判に携わってきた井戸謙一弁護士と話をしたことがあるが、彼も「マスコミは事件の詳細を報道をする必要はない」と言っていたのを思い出す。

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2023/06/17

                       6月の記事


二羽の鳥       …  家の前の光ケーブルの二羽の鳥が結ばれそうだ。

二羽の鳥(2)    …      二羽の鳥が協力して巣を作り始めた。

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                                        二羽の鳥


 ここ一週間ほど前から、私の家の玄関付近で二羽の鳥を見かけるようになった。体長は鳩くらいだが胴体は小さく尾が長いのでスリムな感じがする。色は羽根が黒色、頭部は茶褐色だと思うのだが、見る時はたいてい逆光なので確かではない。この鳥の名前を知りたいと思ってインターネットで調べたが、よく分からなかった。

 さて、この2羽の鳥、昨日気づいた時には私の家の前の光ケーブルに5メートルほど離れて留まっていた。そして左の方にいた一羽が、まるでジャンプするようにして30センチほど右側の鳥に近づいた。でも、右側の鳥はまるで気づかないかのように動かない。そして、しばらくするとまた左側の鳥が30センチほど右へ移動した。それでも、右側の鳥は動かない。そんなことを何度も繰り返して2羽は次第に近づいていったのだが、距離が2メートルほどになった時、不意に右側の鳥が飛び立った。すると、左側の鳥もその後を追うように飛び立ち、2羽は隣家の屋根をかすめてどこかに消えた。

 そして今日、一羽の鳥が自分の身長ほどもある枯れ草をくわえて光ケーブルに留まっていた。その鳥は首をあちこちに向けて何かを探しているようなのだが、どこかへ飛んで行く気配はない。そんなとき突然、近くでピーーという鋭い鳴き声がして、鳥は瞬間的にその方向へ飛び立ち、それを見た私は急に思いついた。昨日、あの二羽は夫婦になったのではないか。それで卵を産むことになって、巣作りをしているのではないか、あの小枝はその材料だったのではないか、と。そう思うと、私は急に幸せな気分になった。もちろん、そんな推測が当たっているかどうかは分からない。でも、その後、今度はビニールの切れ端をくわえて留まっているのを見た。

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                                        二羽の鳥(2)


 私が二羽の鳥を最初に見たのは、三日前の昼過ぎのことだった。このとき、二羽の鳥は番(つがい)になって二羽で協力しあいながら巣を作っているのではないかと推測し、それを「二羽の鳥」という文章に書いたのだった。そして、その推測は当たっていた。

 一日後、やはり昼過ぎに玄関前へ出てみると、また二羽が来ていて、一羽は光ケーブルに留まり、もう一羽は枯れ草をくわえて玄関付近を飛び回わり、時々玄関脇のモッコウバラの近くでホバリングした。私はそれまでにこの種の鳥が空中でホバリングするのを見たことがない。強いて言えばヒナ鳥にエサを運んできたツバメが巣の前で短時間ホバリングするのを見ることもあるが、ツバメのホバリングはせいぜい二、三秒だ。一方、私の見た鳥はたぶん十秒くらいは同じところにとどまっていたと思う。そしてその後、いったんは飛び去って光ケーブルに戻るが、しばらくするとまた降りてきて同じところでホバリングするのだ。それを四、五回繰り返したが、ついに二羽が揃ってどこかへ飛び去った。

 それを見ていた私は、もしかしたらこのモッコウバラの茂みの中に巣があるのではないかと茂みをのぞき込んだ。すると、あった! 枯れ草やビニールの切れ端を集めて作ったソフトボール大の巣があったのだ。それを見つけた私は、あの二羽の鳥は結ばれて夫婦になったのだろうということや、その結果、巣作りをしているのではないかという私の推測が当たっていたことに感動した。そして、それとともに先ほどのホバリングの意味も理解した。巣作りの材料を運んできたものの、私がいたので巣のありかを知られるのを警戒して、巣には近づかなかったのだ。私が巣作りの邪魔をしたのである……。

                   鳥が巣を作っていたモッコウバラの茂み

                     モッコウバラの茂みの中の巣

患者様ということば     お説教屋さん         マークⅡ          写真とイメージ                  

 男と女、雄と雌           二羽の鳥(4)         肉薄か肉迫か        犯罪報道は要らない  

二羽の鳥     二羽の鳥(2)      二羽の鳥(3)      Bing検索  

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                                       二羽の鳥(3)


 家の前の光ケーブルに2羽の鳥がいるのを見て「二羽の鳥」を書いたのは先週の金曜日だった。そして土曜日の昼頃、その鳥が我が家の玄関横で枯れ草をくわえてホバリングしているのを見て、近くに巣を作っているのではないかと気づき、実際にその巣を見つけて感動の思いですぐに「二羽の鳥(2)」を書いた。

  ところが、その日はそれ以後、二羽の鳥を見ることはなく、次の日曜日も昼頃まで鳥は来なかった。その間は、私がホバリングしている鳥のすぐ近くからその様子を見ていたので、鳥たちは巣が見つかったことを悟ってこの巣を放棄したのではないか、もしそうだとすれば鳥たちに申し訳ないことをしたという思いと、もうあの鳥たちを見られないという残念な気持ちでいっぱいだった。

 ところが、昼過ぎになって二羽が揃ってやって来た。そこでドアの陰に身を隠して二羽の様子を見ていると、二羽はごく親しげにもつれ合うようにしてあちこちを飛び回り、やがてどこかへ姿を消した。その二羽が仲のよい夫婦になったらしいことや、また戻ってきたことがうれしく、私は幸せな気分になった。そして、その次の月曜日も、同じような光景を何度か目にした。

 ところが、火曜日から今日(木曜日)まで、一度も二羽の鳥の姿を目にしていない。やはりこの巣は危険だということで放棄したのだろうか。

 ただ、周囲をよく見てみると、私の家から少し離れた電線の上に毎日、一羽の鳥が留まっている。断言はできないが、大きさや形からあの2羽のうちの一羽のようだ。もう一羽は危険を察知してどこかへ去り、この一羽がいつまでも帰らぬパートナーを待っているのではないかと思うと、切ない思いが込み上げてくる。

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 私は「二羽の鳥」という文章を書いて以来、この鳥の名前を知りたいと思ってインターネットでいろいろ調べてみた。最初はツバメの仲間ではないかと思ったので、関連の記事を読んでみたのだが、その中では目的の鳥を見つけることができなかったので、Bing検索を使ってチャット形式の質問をしてみた。これは最近話題になっているチャットGPT類似のものだと思うが、予想以上の回答を得ることができて感動したので、それを紹介しよう。まずは、質問と回答の全文だ。

 【質問文】家の軒下のモッコウバラの茂みの中に鳥が巣を作っています。羽根の色は灰色がかった黒褐色で、尾が長く尾の先はふたつに割れています。巣の材料は枯れ草やビニールの切れ端です。時折、ピーと鋭い声で鳴きます。ツバメくらいの大きさですが名前が分かりません。可能性のある鳥について説明してください。

 【回答文】おそらく、あなたが見た鳥は「ヒヨドリ」ではないでしょうか。ヒヨドリは灰色がかった黒褐色の羽根を持ち、尾が長く尾の先がふたつに割れています。また、巣の材料に枯れ草やビニールを使うこともあります。ツバメくらいの大きさで、ピーと鋭い声で鳴きます。  読んでみると、回答文は私の質問をほぼなぞっているだけのようにも見えるが、それは逆に言えば、私の質問したポイントをすべて踏まえた回答になっているということだ。欲を言えば、ヒヨドリと断定するために観察すべき他のポイントや、他の鳥である可能性の検討、そしてさらに深く調べるための参考文献の提示もあればなお良かったと思うが、今回のところ、私はこれで充分満足している。どうやら、情報技術の進展は私が想像していた以上のようである。

             ヒヨドリ(インターネットより)

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                                      鷺の異変


 少し前に私は「夏近し」という文章で、私の家の付近を飛んでいく白鷺について書いた。そのときは、実際に朝、上空を飛んでいく白鷺を見たことからあの文章を書いたのである。ところが、あの文章を書いたことで空を見上げる機会が多くなって、毎日何度も空を見ていると、白鷺の数が以前より減ったようで、鷺の世界に異変が起こっていると感じるようになった。

 数年前までは、朝、空を見上げると、2羽・3羽、5羽・6羽と、ほとんどほとんどひっきりなしに鷺が飛んでいくのを見ることができた。ところが、今年は何十秒か待たないと鷺を見ることができないのだ。そして、以前は飛んでいく鷺の9割くらいは白鷺だったのに、今年は半数くらいは灰色っぽい色の羽根の鷺に変わっている。私は鷺の種類には詳しくはないが、おそらく、ゴイサギかアオサギだろうと思う。さらに芹川の水辺にいる鷺の数も例年よりは少ない。

 そこで、何らかの事情で白鷺の数が減っているのではないかと思って彦根城の森の鷺の営巣地に行ってみると、そこには以前と同様、樹上にたくさんの白鷺が留まっていた。以前と比べると心なしか少ないようにも見えるが、極端に減ったわけでもないようだ。実際、私は誰かから鷺の数が減っているとか、鷺の駆除をしているとかの話も聞いたことがない。そうなると、なぜ我が家の上を飛んで行く白鷺が減ったのかは分からない。

 私は以前、姉川の河口付近で何百羽、何千羽のカワウと同じくらいの白鷺の集団が対峙している様子を「黒い群れ・白い群れ」という文章に書いたが、それも最近では見られない。鳥の数や行動パターンの変化は謎だらけだ。さて、これからどうなるのか、興味津々である。

           彦根城のサギの営巣地(シロサギ以外のサギも混ざっている)

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二

                                      トンビとアドバルーン


 朝、ゴミ出しを終えてふと空を見上げると、トンビが輪を描いて飛んでいた。その飛び方が実にみごとなのだ。まったく羽ばたくことなく、直径15~20メートルくらいのほぼ正確な円を描いて、何度も何度も同じところを旋回しているのだ。両側へまっすぐに羽を伸ばし、少し内側へ体を傾けて滑空している様子は、軽飛行機がカーブしている時と変わらない。

 高さは地上2~30メートルだろうか。その下は住宅の屋根のはずだ。それを見ていてふと疑問が湧いてきた。あのトンビがどうして一定の高度を維持していられるのだろうかということだ。羽根を広げていれば飛行機と同じで揚力が生じるのは分かる。でも、空気中を飛んでいれば空気の抵抗によって速度が落ちるはずで、そうなれば揚力も小さくなって高度が下がるはずである。普通、鳥はそうなれば羽根を羽ばたいてまた上空に昇るものだ。ところが、私が見ていたトンビには全くそんな様子が見られなかったのである。

 あのあたりに上昇気流があるのだろうかとも思った。でも、空は曇っていて地面や屋根が太陽光で暖められているわけではないから、そんな上昇気流がありそうにも思えなかった。それに、空気抵抗を受けているはずなのに速度が落ちない理由も分からない。 

 そんなことを考えながらトンビを見ているうちに、遠くの空にアドバルーンが上がっているのを見つけた。その文字は読めなかったが、そちらの方向でドラッグストアーが開店したはずで、そのアドバルーンらしい。

 トンビもアドバルーンも、久しぶりだ。最近の若者はアドバルーンという言葉も知らないかもしれない。何十年か昔にタイムスリップした気分になったのだった。

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                                    「申す」ということば


 先に「指導」ということばに関する私の失敗談を書いたが、「申す」ということばにも似たような思い出がある。私が教師になったのは、文部省→教育委員会→校長→教員という序列が強調されていた頃で、それまで職員会議が学校の最高の意志決定機関だということが暗黙の了解になっていた学校が多かったが、文部省は学校運営は校長の専権事項だと言い出していたのだ。

 当然、教職員組合は反発し、職員会議は校長と組合が対立する場になっていた。日常のごく些細なことに関しても、校長派の先生は組合派の先生の発言を激しく批判するのが常だった。その際、校長の発言を引き合いに出して、「校長先生も申されたように」と前置きをして、その内容が校長の意向にそぐわないと批判するのだ。

 その論争は表面的には激しかったが、それでも私は校長派の先生の「校長先生も申されたように」という言い方に感心していた。「申す」というのは身分の低い者が高い相手に向かって言うということばだ。だから校長先生が「申された」というのなら、校長よりも上の存在があるということだ。でもそれは特定の個人ではあり得ないから、それは集団としての教師、つまり職員会議しかない。校長派の先生たちも、内心では職員会議の方が校長より上位だということを認めているのだ。私はそう思い込んでいたのである。

 私がそう思い込んでいたのは、1年以上に及ぶ。ところがある時、彼らが「申された」というのは「仰った」というのと同じで、尊敬語として使われているのだと聞いて、びっくりしたのだった。それは日本語としては間違いだが、世事に疎い私は学校の先生がそんな間違いをするとは思いも及ばなかったのである。

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                                    「指導」ということば


 私はことばの意味をそのことばに使われている漢字の意味から説明するのは間違いだと思っているが、「指導」ということばに関してはその漢字の通り、「指し示して導くこと」だと思っている。念のために、今回いくつかの国語辞典で調べてみたが、どれも同様の説明がされている。ところが、社会ではかなり違った意味で使われていてとまどうことがある。

 もうずいぶん古い話だが、私が教師になった直後、生徒指導の先生から「○○君は髪の毛が長いので、切ってくるように指導してください」と言われた。そこで私はその生徒に髪が長すぎると注意したのだが、強く叱ったわけではない。当時は長髪が流行っていて、私は「彼はすぐには髪を切らないだろうから、この指導は何ヶ月もかけての長丁場になる」と思っていたのだった。

 ところがその数日後、私は生徒指導の先生から「○○君が髪を切るように指導しなさいと言ったのにそのままじゃないか」と叱られたのである。私は「自分は指導しているの……」と心外で、その先生がなぜ怒っているのかはさっぱり分からなかった。それでも、やがて、その先生が「指導する」というのは、「命令して従わせる」という意味だったことを知り、教育現場ではそれが常識なのだということも知ったのだった。

 他にも、「指導」ということばが、「命令」と同じ意味で使われることがよくあるようだ。「行政指導」などもその一例だろう。また、柔道の試合で「指導」を3回受けた選手は負けになる。本来、「指導」というのは前向きなアドバイスを意味することばのはずなのに、マイナスの意味を持つ判定用語として使われているのだ。世界の人々はとまどっているのではあるまいか。

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                                      日本語は正しく使うべし


 NHKの「クローズアップ現代」という番組で、内水氾濫(大雨などで急激に水の量が増えて、地下水や小河川の排水が追いつかず、街に水があふれ出してくること)の特集を見ていた時のことである。番組で過去の内水氾濫の実例を挙げて「○○市の内水氾濫では○○人の命が奪われました」というようなナレーションがあって、私はこのナレーションに違和感を感じた。

 「奪う」というのは、誰かが意図的、暴力的に何かを強引に取るという意味の言葉のはずだ。とすればこの内水氾濫で被害者は意図的に命を取られたということになるが、ではこの場合意図的に命を奪ったのは誰なのか。氾濫した水にそんな意図があるはずはないし、内水氾濫の防止策をとっていなかった行政にしても、たしかにそれは怠慢だったかもしれないが、住民の命を取ることを意図して対策を怠っていたのでないのは明らかだろう。とするならば、「命が奪われた」というセンセーショナルな言い方は不穏当で、せいぜい「命が失われた」と言うべきだったはずだ。

 しかもこれは出演者の誰かが話した言葉ではなく、番組のナレーションなのだ。ナレーションなら、それは番組制作者の見解を表明したものということになる。おそらく、番組制作者の中に視聴者の注目を引くセンセーショナルな番組にしたいという意識があったのだろう。

 最近、7年前のスキーバス事故で15人が死亡した事件で、バス会社の社長と運行管理責任者に実刑判決が言い渡されたというニュースがあった。私はこの判決自体は支持するが、裁判長が「命を奪われた大学生~」と言っているのには違和感を感じる。冷静たるべき裁判長はこういうことばを使うのは控えるべきだろう。

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二

                                        自虐の世代


 タイガース 勝ってる時は 落ち着かん

 これは半月ほど前に毎日新聞に載っていた川柳だが、久しぶりによい句を読んだと思った。タイガースが勝っている時は、次ぎ負けるのではないかと気が気ではないという意味だろう。私はタイガースファンではないが、こういう気持ちはよく分かる。同じような心理は誰にでもあることで、それをタイガースに仮託してうまく表現している。その後しばらくこの句のことを忘れていたが、昨日この句が月間最優秀賞に選ばれたという記事を目にしてうれしくなり、この文章を書き始めた。

 私は一時期、川柳に興味を持っていた。微妙な人間心理を短いことばで表現するのが魅力的に思えたのだ。しかし、私は半年か1年ほどでその興味を失った。新聞で目にする川柳のほとんどが自虐ネタだったからだ。しかも、その作者はほとんど老人であるらしく、自虐の多くはグチっぽい老人の自虐だったのだ。毎日こんな自虐的な句を読んでいると、私までうっとうしくなってきて、私はいつしか川柳を読まなくなっていった。

 それにしても書いている本人はこんな句を書いて楽しいのだろうかと、よく思う。年寄りのグチや自虐は今に始まったことではないが、現在の70才、80才といえば、高度経済成長の時代に生きて、活気のある日々を送ってきた人たちのはずだ。大人から「今の若い者は」と言われながらも、自分達の文化を創った。60年安保、70年安保という政治運動も経験し、新しい世界、新しい明日を夢見た人も多いに違いない。当時のチャレンジ精神は一体どうなってしまったのか。自分を粗大ゴミになぞらえて自虐にふけり、そういう句が新聞に載るのを喜んでいる、そういう老人たちが情けない。

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                                        同性婚反対


 最近、同性婚が認められていないの法の下の平等を規定した憲法に反するという訴えが出され、いくつかの地方裁判所でその判決が出された。そのうちの一つは現状は合憲、ふたつは違憲、そして後のふたつは違憲状態という判断だったようだ。一方、マスコミの論調は同性婚を認めるべきだという方向に傾いているように思う。

 でも、私自身は同性婚は認めるべきではないと思っている。これを認めるかどうかは結婚という制度の捉え方によるが、私自身は結婚というのは男性と女性が子供を作り、その子を養育するための枠組みを定めた制度だと思っているからだ。この制度によって個人の側からすれば夫婦や親子としての特権が得られるし、社会の側からすれば社会の存続を確保できる。要するに、結婚というのはその夫婦に通常の個人としての権利を越えた「特権」を保証するものであり、その特権がないからといって個人としての権利が否定されているわけではない。

 実際、結婚していない場合でも特定のパートナーと共同生活をするのは自由だし、性的な行為が制限されるわけでもない。ただ、問題は二人が扶養関係を持つことや、相続に関する法的な権利が保障されていないこと、片方が病気になった場合などに、そのパートナーに治療や介護などの方針を決める法的権限がないことなどであろう。私はそれが必ずしも不都合なこととは思わないが、必要ならば特別のパートナー関係を保護する法律を作ればいいし、私はそれに反対しない。しかしそれは男女間の結婚とはあくまでも別だ。

 ただ、パートナー関係を保護したとしても、当事者の間に支配・被支配の関係が疑われるような場合はどうするのだろうか。考えてみるとこの問題は奥が深いのだ。

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                                        袋だたきの好きな国


 最近、芸能界を巡るふたつのニュースでマスコミが湧いている。そのひとつはジャニーズプロダクションのジャニー喜多川氏が、その地位を利用してプロダクション所属の若いタレントに性行為を強いたという事件だ。そしてもう一つは歌舞伎俳優の市川猿之介がMという男性と同性愛の関係になり、それが週刊誌で暴露されそうになったので、自分の両親とともに自殺を図って、彼だけが命を取り留めたという事件である。

 事実として正確かどうかは分からないが、ある記事の中に、猿之介の主演映画を制作していた会社が俳優を変えて撮り直しをするのに35億円もかかる。その賠償を猿之介側に請求するはずだという記載があった。しかし、なぜ映画を撮り直さなければならないのか、そしてその費用をなぜ猿之介に請求するのか。

 以前から日本にこういう慣習があったことは私も知っている。しかし、俳優が不祥事を起こしたとしても、そのまま公開すればいいのである。もしかしたら不祥事を嫌って観客が減るかもしれず、その分は俳優側が負担すべきかもしれないが、まるで作品自体が汚いものであるかのようにお蔵入りにしてしまうのは筋違いだ。

 今までも芸能人が薬物の使用で逮捕されたような場合、関係者はひたすら平身低頭して「世間にお詫び」するのが常だった。でも単なる個人の罪を、被害者でもない「世間」になぜ「お詫び」しなければならないのか。しかも本人ならともかく、関係者が、である。「世間を騒がせた」と言うが、世間が勝手に騒いだだけで、それに火をつけたのはマスコミやゲス根性の人々なのだ。

 日本には「世間」から逸脱した人を袋だたきにする風習が昔からあったが、もういい加減にして欲しい。

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                                        中田ケン子さん


 在日ブラジル人のこども達を教育しているサンタナ学園が財政的に窮迫して、運営資金の一部をクラウドファンディングで募っているというニュースをテレビで見た。技能研修生などとして日本で働いているブラジル人のこども達には日本の教育制度が適用されず、以前は親が働きに出ている間は家に残されたままになっていたのだ。たまたま日本へ観光旅行に来た日系ブラジル人の中田ケン子さんがそれを知って、日本に移り住み、私財を投じて設立したのがサンタナ学園である。

 私は「この人に会いたい」というラジオ番組のために丸1日、中田さんに密着してインタビュー取材した。まず、朝6時過ぎからマイクロバスを運転してそれぞれの家までこども達を迎えに行く。派遣労働に携わっている人たちは勤務時間が不規則でこどもを学校に送ることができないので、こうして迎えに行かなければ登園できないのだ。20キロほどの道のりを走って、20人ほどの子どもを迎える。これが毎日なのだ。中田さんは決して若くはないが明るく元気で、夕方、子ども達を家に送り届けるまで、学園の中を走り回っていた。

 この日、私は子供達の中に入って過ごし、昼ご飯も子ども達と一緒に食べたのだが、子ども達はみんな明るく人なつっこかった。たまたまこの日私の車のバッテリーがあがってしまうという事故があったのだが、そのときすぐに高校生くらいの子がやってきて、私の車を充電してくれた。それが実に手際よく頼もしく思えたものだ。学園のスタッフもみんな親切で明るい人たちだった。こういう学園ができたのは、何よりも中田さんの、誰にも優しい人柄と行動力の結果だったのだろう。世の中にはこんなすごい人もいるのだと実感したのだった。

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                                       千代女のウソ


 加賀千代女という女流俳人の句に「朝顔につるべ取られてもらい水」という句があるが、実際にはこんなことはあり得ない。これは彼女の実体験を踏まえたものではなく、頭の中で作った句だと思っている。そう感じたのはずいぶん前、私が高校生の頃だった。

 こんなことはあり得ないというのはどうしてか。

 確かに朝顔の成長は早く、一晩の間につるべに巻き付いてしまうことはあり得る。しかし、つるべに巻き付いた直後なら簡単に外せるから、もらい水をする必要はない。いや、それ以前に、伸びてきた朝顔のツルがつるべに届きそうになったら、ツルを他のところへ誘導してやるのが普通だろう。それに、この日もらい水をしたとすれば、それ以後、朝顔が枯れてしまう秋までそうし続けなければならない。でもそんなに長い間井戸を使わなければ、他の植物が生えてきたり、ゴミが落ちたりして井戸が荒れてしまうから、普通そんなことはしない。

 この句にはそういう生活実感がまるでないのである。加賀千代女は表具屋の娘として生まれたのだそうだが、おそらく裕福な店で、家事などはすべて女中さん任せ、千代女自身は炊事も洗濯もしたことがないのではないだろうか。たぶん、暑い夏に水を飲みたくなった時に自分で井戸から水を汲んだことさえないのだろう。

 もちろん、そのこと自体を非難するつもりはない。ただ、それならそれで自分の生活を踏まえた句作をすべきで、いかにも自分が繊細な心遣いができるかのようなウソの句を作ってはいけない。そういう句は生活実感を持っている一般の読者をシラケさせるだけだ。俳句は実体験の感動を表現すべきものであり、単なることば遊びではないというのが私の持論なのである。

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                                       Jアラート大騒動


 5月31日の朝、北朝鮮が軍事偵察衛星の打ち上げを試み、日本ではJアラートが出されて、大騒ぎになった。Jアラートが出た時、屋外にいる場合は近くの建物か地下に避難して物陰に身を隠すか地面に伏せて頭部を守り、屋内にいる場合は窓から離れるようにということだそうである。まるでマンガのような避難指示だ。さいわい朝の早い時間帯で対象地域も沖縄付近だったからよかったものの、もしこれが大都市圏で通勤通学の時間帯であれば、パニックが起こって何人ものけが人や死者が出ても不思議ではなかったと思われる。

 そもそもJアラートはどのような事態を想定して出されたものなのか。もし核攻撃を想定しているのなら、物陰に隠れようが地面に伏せようがほとんど効果はないだろう。そして、ロケットの一部が落下するのを警戒してのことなら、それに直撃される可能性ほとんど無視できる程度だ。それでももし不幸にして直撃されたら、屋外にいようが屋内にいようがまず助からない。いや、屋内にいる場合は建物が壊れて被害が拡大しかねない。

 今回、北朝鮮は飛行経路も第1段の落下する可能性のある海域も事前に公表していた。それを見れば、特に心配するほどではなかったことが分かる。ほとんどの人は知らないだろうがその1週間ほど前には韓国の打ち上げたロケットが鹿児島県の西側、種子島の手前の海域に落下している。もちろんこのときはJアラートなど出されていないが、客観的に見れば、落下海域から考えて、今回よりもずっと危険性は高かったのだ。

 今回、テレビ各局は特別番組を組んで大騒ぎをしたらしい。NHKは連続テレビ小説「らんまん」の放送を取りやめたという。実にばかばかしい話だ。

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 先に私は「Jアラート大騒動」という文章を書いて、Jアラートによる避難行動は意味がないばかりか、避難行動中にパニックが起これば多数の死傷者が出る可能性があることを指摘した。たとえば、人々が交通信号を無視して避難行動を起こせばあちこちで事故が起こるだろうし、ビルにいる人々が下の階に避難しようとして階段に殺到すれば、誰かが足を踏み外したり後ろから押されて転落したりして、それをきっかけに階段にいる多数の人々が巻き込まれる事故にもなりかねない。

 そのような危険のあるのに、北朝鮮がミサイルを発射するたびにJアラートが発令されるのはなぜだろうか。Jアラートの根拠になっている「国民保護法」の正式名称は「武力攻撃事態等における~」となっていて、問題はこの「等」だろう。過去も今回も、武力攻撃ではなく、危険がないことも明白だったのに、この「等」によって法律を拡大解釈してJアラートを発令したのだろう。それは北朝鮮が怖い国だということを国民に意識付けるキャンペーンの一環だったと私は思っている。

 それにしても、今回の騒ぎで私が感じたのはマスコミのだらしなさである。まともなマスコミ関係者ならここに書いた程度のことは当然理解していただろう。それなのにことさら騒ぎを拡大するような放送をした。当日朝の番組が組み替えられたことなどはその典型的な例だ。安倍政権の頃から政府の意向を忖度するのがマスコミの習い性になっているようだが、本当にそれでよいのか。

 これは局の運営だけの問題ではない。私の知る限り出演している記者やコメンテーターからも冷静なコメントはなかった。マスコミは政府公報ではない。マスコミは本来の使命を自覚し、独立性を回復して欲しいと思う。

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 北朝鮮が弾道ミサイルや人工衛星打ち上げ用のロケットを発射するたびに日本政府は「北朝鮮が国連決議に反した」として非難している。この「国連決議」とは2006年7月、国連安全保障理事会が行った「安保理決議第1695号」のことらしいが、その主要な部分は

「北朝鮮が弾道ミサイル計画に関連するすべての活動を停止し、かつこの文脈に於いて、ミサイル発射モラトリアムに係る既存の約束を再度確認することを要求する。」(外務省による正式訳文)となっている。

 ここでいくつかの点について指摘しよう。まず第1は「国連決議に違反」という言い方をすると、普通は国連総会など北朝鮮も参加する会議での正式な決議を想像するが、これは安保理事会の決議であって、北朝鮮側の言い分は考慮されていないということだ。そして第2に、この訳文にもあるように北朝鮮に対して「要求」しているのであって、命令しているのではないということだ。国連が各国政府の連合体で、加盟国の上位に立つ組織ではない以上、それは当然のことだろう。その場合、「要求」された側がそれに従うかどうかはその国の判断によるところで、それに従わなかったからといって決議に違反したことにはならない。

 しかし、最大の問題は国際的な法秩序の一貫性を無視して、特定の国を縛ろうとしていることだろう。現在の大国は同様のミサイル実験を繰り返してICBMを装備した。自分達は良くて北朝鮮はダメだという根拠は何なのか。私も北朝鮮にミサイルを廃棄させたいが、今の政府のやり方は逆効果だ。第2次大戦前、日本は満州国を巡って国際連盟を脱退し、太平洋戦争に突き進んだ。同じ過ちを北朝鮮に犯させたくないと思っている。

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