オランダの冬
最近「オランダの冬」ということばがあるのを知った。1944年から1945年にかけての冬、ナチスに占領されていたオランダで西部を中心に450万人が飢餓状態に陥り、2万人ほどが餓死したという事件だ。この話を読んで私がすぐに思い浮かべたのはパレスチナの現状である。イスラエルの侵攻を受けているガザも食料や医薬品が調達できず、しかもイスラエル軍の攻撃で多数の民間人が犠牲になっている。このまま行けば餓死者や戦死者が増えてオランダの冬以上の惨劇になるのは確実だ。いや、すでにそうなっている。
ところで、オランダの冬にはもう一つ注目すべきことがある。そんな飢餓の中で4万人ほどの赤ちゃんが生まれたのだそうだが、その子ども達の中には成長してから肥満体になる人が多かったというのだ。しかも、そのような体質はさらに子から孫へと受け継がれたのだという。これまでの生物学では、生物が後天的に獲得した性質は遺伝しないというのが定説だったのだが、遺伝子に付随する物質のわずかな変化が子孫に受け継がれることもあるという、エピジェネティックな現象らしい。
生物学においてすらそうなのだから、社会的な敵対意識や偏見は間違いなく世代を超えて受け継がれる。ナチスがユダヤ人絶滅を画策した裏には民族間の敵対意識やドイツ人こそが最も優れた民族だという思い上がりがあった。さらに、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教という宗教的な対立感情も見逃せない。ナチスの最大の犠牲者であったイスラエルの人々が、今、ナチスと同じように振る舞い、オランダでは極右政党への指示が広がっているという。私たち人類は社会的な偏見を断ち切る力を持っているはずなのにそれが発揮されていないのだ。
あげる・してあげる オランダの冬 ほうれい線 ムクドリの警戒心
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