反核のリアリズム(2)
広島、長崎の原爆の犠牲者は約20万人である。これは、それに先立つ東京・大阪などの本土大空襲の死者数の総計や、沖縄戦の死者数とほぼ等しい。
さて、この広島、長崎への原爆投下についてアメリカ側は公式には「原爆は終戦を早め、より多くの犠牲者が出るのを防ぐことができた」と評価しているようだ。それに対して、最近では「原爆の投下がなくても、この時点では日本の降伏は目前に迫っており、原爆の投下は必要なかった」という論議もよく聞く。しかし、私はその見方に賛成できない。それはなぜか。
この当時、日本は本土決戦をとなえて、特攻訓練や竹槍訓練などをしていた。一方、アメリカ側は九州や関東への上陸作戦を計画しており、秋にはそれが発動される予定だった。さらにはソ連の対日参戦も間近に迫っていた。この状態で本土決戦に突入すれば全国至る所で激戦となり、指揮系統を失った日本軍や民間人が各地でゲリラ戦を展開して文字通り玉砕しただろう。追いつめられた人々の中には集団自決を選ぶ者も出たに違いない。
沖縄戦ではそのようにして20万人の犠牲者が出た。当時の沖縄の人口は50万人だというから実に人口の4割が犠牲になったことになるが、仮に本土の人口を8000万人としてこの比率を当てはめれば、実に3200万人が犠牲になる可能性があったということだ。
さらに、ソ連が参戦していればどうなったか。ソ連は電撃的に北海道や東北を占領し、首都圏や西日本を占領したアメリカと対峙して、日本は分断国家になっていたかもしれない。原爆など投下しなくても、何ヶ月後かには日本が降伏していただろうという人もいるが、その何ヶ月かが決定的に重要なのである。
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