2023/11/29

             私が嫌悪する歌


 昭和20年代の曲をまとめて聞いていて、芸者ワルツという曲に行き当たった。インターネットの解説によると、江利チエミのテネシーワルツがヒットしたので、それに対抗する曲ということで作られたのだそうだ。その歌詞の冒頭部分は

 あなたのリードで島田も揺れる、チークダンスの悩ま しさ、乱れる裾も恥ずかしうれし…… 

となっている。いわゆる「お色気」路線の歌だが、私はこういう歌は好きではない。それで作詞家を調べてみたらなんと西條八十となっていて、愕然とした。

 西條八十といえば数々の童謡を書いた詩人ということで私はこれまで好感を持っていたのだ。ところが調べてみると私が以前から嫌っていた「蘇州夜曲」も西條八十だと分かった。私が嫌っていたのは、この曲がいかにも植民地主義的な臭いを感じさせるからだ。中国に進出した日本の大富豪が現地の女性を侍らせて船遊びをする、女性の方もそれに迎合している。この曲はそんな情景を連想させるからだ。実際、この曲は一時期「シナの夜」とともに放送禁止歌になっていたのだという。

 私は「花柳界」とか「お座敷」とか「芸者」とかが嫌いだ。私自身は直接そういう世界を知らないので偏見もあるかもしれないが、こういう世界では金の力をひけらかす人間の醜さが露骨に現れているように感じる。金で女の心を買おうとする男、そんな男をうまくあしらって金を出させようとする女には嫌悪しか感じないのだ。でも、自分が生きるために金を稼ごうとする娼婦に対しては、私はそういう意味での醜さを感じたことはない。

 だから、人間に醜さが表面に出た「芸者ワルツ」や「蘇州夜曲」にも嫌悪しか感じないのである。

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