2023/11/29

         結婚生活42年(4)


 10年ほど前からだろうか、私の妻が「もしお父さん(私のこと)が死んでも、私は絶対再婚などしないわ」と言うようになった。「全く違う感覚で育ってきた2人が理解しあい、折り合えるようになるというのがどんなに大変なことかを身をもって知ったから、あの苦労をもう一度しようとは思わない」と言うのだ。

 私は妻と結婚して、いくつもの不正不満を抱いてきたが、それは妻も同じだったのだろう。というよりも、妻の方が精神的な負担が大きかったのかもしれない。というのは、私は何事に対しても「まあ、いいや」というところがあったのだが、妻は世間の常識を重んじ「かくあるべし」という意識が強い人だったからだ。それを抑えてずいぶん私に妥協してくれていたのだと思う。

 そして、10年前頃から妻がこういうことを言うようになったのは、私たちの関係も一応安定してきたと感じるようになったからだろう。最近でもやはり何日かに1回はケンカをするけれど、私が隣近所に響き渡るような大声を出すことはなくなってきたし、ケンカしても次の日にまでそれを引きずるということもなくなった。

 結婚にもいろいろあって、最初から最後までラブラブの関係を保つ夫婦もあるだろう。どちらかが相手に妥協して平穏な関係を保つ夫婦もあるに違いない。私たちはそのどちらでもなかった。しかしそれはそれでよかったと思っている。私が妻とケンカしたとき、「離婚」ということばが脳裏に浮かんだこともある。でも本気でそうしたいと思ったことはない。最も激しいケンカをしていたときでも、私は心の底では妻を信頼していたし、妻も私を信頼してくれていたのだと思う。私たちの結婚は間違ってはいなかったと誇ってもいいと思っている。 

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