特派員報告
今から60年ほど前、私がまだ中・高校生だった頃、NHKに「特派員報告」という番組があって、私は欠かさずに見ていた。それは日本という狭い世界に住んでいる私にとって、世界に開かれた数少ない窓の一つだったように思う。夜7時代とか8時代とかのゴールデンタイムに放送されていたので、私以外にも多くの人が見ていたのだろう。ところが、いつしかその種の番組はなくなってしまった。
当時はまだ、一般の人々が気軽に海外に行ける時代ではなかったから、物珍しさもあったのだろう。ところが、その後海外との行き来が増えるに連れて普段から海外事情に接することができるようになり、番組がすたれたのだと思う。しかし、一般人が海外に行くようになったからといって、我々の海外に関する理解が深まったのかといえばそれは疑問だ。なぜなら、一般人の行く先は海外の観光地や大都会が中心で、奥深い田舎や紛争地に行くことはまずないし、現地の歴史や社会に関するそれなりの予備知識がなければ、本当に大切なことに気づくのは難しいからだ。だから、専門的な訓練を受け、経験も積んだプロのジャーナリストによる「特派員報告」が今も有効なのではないかと私は思っている。
私が「特派員報告」のことを思い出したのは、イスラエルのガザ侵攻を伝えるNHKのイスタンブール支局長の現地レポートをたまたま見たからである。内容の深さという点で私はまだまだ不満だったが、それでもかつて見た「特派員報告」の雰囲気はあった。レポートしようとする社会の底辺にまで入り込んで、そこに生きる人々のリアルな現実や、絶望や希望を伝える「特派員報告」の復活を望みたい。
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