2023/02/17

                                        笑いを欲しがる人 


 「笑うことだけを欲しがる人って、それほどにやさしくない人さ」

 これは、泉谷しげるのフォークの歌詞の一部である。泉谷しげるは私が最も好きな歌手だが、私が最初にこの歌詞を聴いた時はあまりピンとこなかった。というよりも、笑うっていいことじゃないか、それをまるで悪いことのように言う必要はないだろう、と思った。

 ところが、最近テレビを見ていると、泉谷の言いたいことがよく分かるようになってきた。特にバラエティー番組などでは、スタジオの出演者がしきりに笑って、時にはさも愉快というように手を叩く。スタジオに観客がいない場合や、野外ロケの番組でも笑い声が入る。おそらく、笑い声だけを別に録音しておいて、番組の編集の際に加えているのだろう。

 私はそういう笑いが嫌いだということを別の文章で書いた。その主な内容は優れた者が劣った者を笑うような人間関係を見るのは不愉快だということだった。でも、笑いにはもう一つの側面がある。それは周りのみんなが笑っていると自分もつられて笑ってしまうものだし、場の雰囲気に水を差したくなければ無理にでも笑わざるを得ないということだ。バラエティー番組の笑いはそのような心理的な圧力を加えようとするものだろう。

 しかし人間は人それぞれである。誰かが面白いことを言った時、思わず笑ってしまうこともあるが、心の底の何かに引っかかって笑えないこともある。そんな時も笑いの世界へ逃げて自分の微妙な感情を忘れてしまうことや、他人を笑いの世界に引き込んでその人の微妙な心情を無視するのは、決してやさしいことではあるまい。泉谷が言うのはそういうことではなかろうか。

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