味オンチの理由
最近、テレビでは「おいしい店」を紹介する番組や飲食店の料理を採点する番組などが盛況である。食事がおいしいかどうかは誰にとっても大きな関心事だから、一定の視聴率を稼ぐには格好のネタなのだろう。ところが私の場合は料理の味にほとんど興味がない。よほど不味いものは別として、たいていの店で出される料理はおいしいと思う。だからグルメを自称する人の話には全くついていけない。要するに味オンチなのだ。
なぜそうなったのかと考えてみると、それは幼い頃の生育環境のせいだと思う。私は田舎の村で、その中でも特に貧しい家で育った。だから普段の食事といえば、ほとんどが野菜の煮付けで、魚を食べるといっても干物だけ、肉を食べることなど年に何回もなかった。そんな中で「今日食べるものがあるのが幸せなことだ。味に贅沢を言ってはいけない。何でもおいしいと思えばおいしいのだ。」と言われながら育った。それに私の母は忙しくて料理にかける時間も極端に短かった。だから食べ物を批評するのは、そんな母への優しさに欠ける不道徳なことだと私は感じていた。そんな中で、いつしか何でもおいしいと感じるようになったのだと思う。
それに対して都会の、特に裕福な人の場合は微妙な料理の味を感じる環境にあったのだろう。裕福な人は一流の料理人を抱え、高級な食材に馴染んでいたのだろうから、もしかしたらグルメの度合いがステータスシンボルだったのかもしれない。そしてその後、日本全体が豊かになる過程で、グルメであることが誇らしいことだという感覚が一般的になっていったのだと思う。もちろん、私はそれを批判するつもりはない。しかし、何でもおいしいと感じる自分の感覚にも誇りを持っている。
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