裁判員制度反対(2)
私は日本の裁判員制度には反対である。ただし、それは理念として陪審員制度や裁判員制度に反対するということではない。私たちはこの社会の主権者として、立法、行政、司法を含む社会運営のすべてに関与する権利と義務を持つべきだと思うからである。実際、政治権力などが裁判に干渉してくる可能性があるような場合、それを排除するためには一般人が裁判に参加すべきだろう。だから、私が裁判員制度に反対するのはもっぱら運営上の実際的な困難のためである。
たとえば、刑事裁判の場合、犯罪事実の認定と、量刑の決定というふたつの段階がある。そのうち犯罪事実の認定に当たっては、余談や偏見にとらわれず具体的な証拠に従って客観的な判断をしなければならないが、それは相当の訓練を受け、経験を積んだ人でなければ無理だ。証拠から事実を判断するには、科学や法医学、心理学などの広範な知識が必要だが、普通の人の場合、そんな知識は持っていないし、起訴状は具体的な事実を根拠にしてそれなりに論理的に書かれているはずだが、相当の文章読解力や論理的思考力がなければ、起訴内容をまともに理解し、その妥当性を判断することはできない。
さらにマスコミの事件報道などで予断を持った一般人の場合、証拠によってではなく、心証で判断してしまいかねない。「あんなひどい事をするのだからあいつは悪い奴だ、悪い奴だから犯人に違いない」というような循環論法にも陥りかねない。そうなれば多数の冤罪を生みだしてしまうだろう。かつて共産主義を自称する国で「人民裁判」が行われ、多数の人間が無実の罪で裁かれた。集団主義で同調圧力の強い日本の場合、特にその危険が強いと私は思っている。
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