偽画像と偽動画(2)
静止画に限らず、動画でもフェイク画像が作れるという。その実例は4年前の「日経サイエンス」誌にすでに掲載されていた。それによると、アメリカ国旗の前にスーツ姿のオバマ元大統領が登場して「トランプはクソったれだ」と言うのだそうだ。そしてその後、彼は「皆さんは私がこんな発言をしないのはご存知だろう」と言って、このフェイク映像が作られた手法を公開するのだという。これは、フェイク動画が容易に作れることやその危険性を警告する動画だったのである。
フェイク動画を作るにはいくつかのソフトがあるそうで、日経サイエンスには編集部員がFace2Faceというソフトを使ってトランプ大統領のフェイク動画を作った実験が紹介されていた。準備するのはトランプ大統領の記者会見を撮影した約30分の動画で、それから静止画を取り出してこれを素材とする。別のカメラでモデルとなる人物(この場合は編集部員自身)を撮影し、そこから表情に関する特徴量のみを抽出して、その特徴を持ったトランプ画像を造ってつなぎ合わせる。こうすれば、モデルの表情がそのままトランプの表情になって、トランプは表情豊かに語り出すのだという。
このレポートによれば、フェイク動画を作成するためには画像生成AIと、フェイクを見破る判定AIを対抗的に働かせて動画の精度を上げるのだそうだ。その丁々発止のせめぎ合いはAIどうしの間で行われ、人間が介入する余地がない。しかも、その間にどんどんAIの能力が向上する。つまり、フェイク動画を見破るソフトを作ったとしても、それはとりもなおさずフェイクの質を高めることになるのだ。今後、私たちは見破れないフェイクの中で生きていかねばならないのだろうか。
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| 「日経サイエンス」編集部員が実際に作成した実演したフェイク動画の一部 (下段の編集部員の表情通りにトランプ元大統領の表情が変わる) |
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