2023/10/31

                                    時空を越えて


 昨夜ふしぎな夢を見た。私がまだ子どもだった頃、NHKのラジオで放送されていた「三つの歌」というラジオ番組に私が出場しているという夢だ。この番組では、伴奏者が何かの歌のメロディーを演奏し、その歌を知っていれば歌詞を思い出しながら演奏に合わせて歌うのである。私は緊張しながらステージに上がった。

 すると楽団の演奏が始まり、私は「粋な黒塀、見越しの松に…」と、「お富さん」の歌を歌い始めた。ところが歌い進めるにつれて演奏とずれていき、やがて演奏されているのは「海は荒海、向こうは佐渡よ…」という「砂山」だと気づいたのである。それでも途中で修正するわけにもいかず、演奏とずれたままで「お富さん」を歌い続けるのだが、どんどん焦っていくという夢だ。これらの2曲で「見越しの松に」の部分と「向こうは佐渡よ」の部分のメロディーが若干似ているようには思うが、なぜ間違えてしまったのかは分からない。

 それにしても不思議なのは、「三つの歌」はもう60年以上も昔の番組だし、「お富さん」にしても「砂山」にしてもそれ以上古い歌なのだが、それがなぜ今夢に出てきたのかということだ。60年といえばほぼ人間の一生で、ずいぶん長い時間だ。でも、夢の中では過去と現在が直結しているかのような、あるいは私の一生がほんの一瞬であったかのような感じがしたのだ。

 それは私たちの記憶が時間を超えて保存されるということかもしれないし、何百億年というこの宇宙の寿命の中では60年などという時間はほんの取るに足りない一瞬だということかもしれない。夢から覚めた私はこども時代の懐かしい思い出に浸りながら、そんなとりとめもないことを考えていたのだった。

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