2023/10/31

                                       結婚生活42年(2)


 私たちの結婚生活は、連日のケンカから始まった。甘い新婚生活と呼べる時期は、ほぼなかったと思う。私たちは最初アパート住まいだったが、そのアパートで私は大声を張り上げる。私はもともと声が大きい方なので、私の声はアパート全体に響いていたはずだ。ケンカをするのが恥ずかしいと思うほどの心のゆとりはなく、私は周囲に迷惑をかけるのが申し訳ないと思いながらも、興奮するとついそうなってしまうのだった。

 ケンカのあげく、妻がアパートを飛び出していったこともある。最初はもうこれで私たちも終わりになるのかと落ち込んだものだが、その夜、妻は近くのビジネスホテルに泊まったそうで、翌日には帰ってきた。そういうことは、その後も何回か繰り返されたが、私はだんだん慣れっこになっていった。もしアパートを飛び出した妻が、実家に帰ったり、友人の家に転がり込んだりして私への不平不満をぶちまけていたら、たぶん私たちの関係は終わりになっていたと思う。しかし、妻はそれをしなかった。皮肉なことだが、そのことで私は改めて妻を評価し、信頼したように思う。

 私たちのケンカの原因は、相手の人格への不信感ではなく、異なった生育歴や生活体験から来る、日常生活での些細な感覚の違いによるものだった。きっかけは些細なことでも、お互いに譲れないことなので、口論しているうちにどんどん深刻になるのである。そんな中で私は離婚ということを考えることもあった。しかし、「それを言ったらおしまい」という感覚があったので、一度も口に出したことはない。妻もその言葉を一度も口にしなかった。2人ともその程度には賢かったし、相手に対する根底での信頼感は失われなかったのだと思う。

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