サントスの脅威
最近、昨年のアメリカ中間選挙で当選したジョージ・サントスという下院議員の経歴詐称が問題になっている。たとえば、自分をよく見せるために学歴を偽ったり、自分に都合の悪いことを隠したりするという経歴詐称は日本でもよくあるが、サントスの場合は出自も、学歴も、職歴もすべてがウソで、選挙民に受けそうな架空の人物像を描いて自分をそれに当てはめたというものだ。通常のケースとは全く次元の違う経歴詐称である。
この経歴詐称が明るみに出たのは、ニューヨークタイムスの記者が彼の経歴を調べて報道したからだった。当初、この記者は彼の経歴を疑っていたわけではなかった。彼が大変魅力的な人物だと感じて彼のことを調べ始めたのだが、まず慈善事業に関して彼の言っていることが事実ではないことが分かった。そこで、学歴や職歴を調べてみると、それらがことごとくウソだと判明したのである。おそらく、その記者は唖然としたことだろう。
今回、彼の経歴詐称が明るみに出たのは、大新聞の記者が彼に興味を抱いたことがきっかけだった。もしそういうことがければ、SNSなどによって彼のウソがそのまま拡散し、定着して、彼は栄光を身にまとった下院議員として(少なくともしばらくの間は)議員活動を続けていたに違いない。
かつては、政治家や有権者は地縁、血縁、政治信条などによって結ばれ、得体の知れない人物が議員になる可能性はなかった。ところが、隣に誰が住んでいるかも分からない大都会の、砂のような大衆の社会では、SNSや派手な政治集会で脚光を浴びた人物が一国の政治を左右するようになる可能性があることをこの事件は教えている。恐ろしい時代になったものである。
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