著作権保護に思う
私が過去に最も影響を受けた小説は、高校2年生の夏休みに読んだ、遠藤周作の「沈黙」だった。その内容をここで説明することはできないが、ともかくそれまでに私が持っていた子どもっぽい世界観、道徳観が完全に否定されたのである。今でも、この小説は日本の文学史上、最高の小説だと思っている。
それ以来、他の人にもこの小説を読んでもらいたいと思ってきた。でも、小説を読むにはちょっとした覚悟が必要だから、誰でもできることではない。それなら、朗読ででも聞ければいいから私が朗読したい、それを私のライフワークにしたいと思った。いつ頃からそう思っていたのかは分からないが、少なくとも20代の後半、私がアマチュア劇団に参加して朗読を学んだ時にそう思っていたのは確かだ。その後、勤務先の高校で朗読教室を開講したり、放送部で朗読の指導をしたりしていた頃にも、そのことは常に私の念頭にあった。
そして、10年ほど前に私が退職した時、いよいよライフワークに取りかかろうと考えた。しかし、文学作品には著作権があるから、正式に許可を取ろうと文学著作権協会に連絡を取ったところ、とんでもなく高い著作権使用料を提示されたのだ。たしか、10分の朗読で20万円か30万円だったと思う。そんな金が私にあるわけはないから、仕方なくあきらめたのだった。
作家の利益を守るために著作権保護の規定があるのは当然だ。しかし、文学作品は個人財産である以上に社会的な財産だ。最近著作権の保護期間が50年から70年に延長されたが、私は逆に10年くらいに短縮されるべきだったと考えている。私の尊敬する遠藤周作も、むしろそれを望んでいるのではあるまいか。
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