渡来人の系譜
私は滋賀県に生まれ、現在も滋賀県に暮らしているが、滋賀県は渡来人の血が最も濃いところだそうだ。東大の大橋先生のチームが各都道府県から50人ずつのDNAを解析して、縄文人の特徴と渡来人の特徴のどちらが優勢かを調べたところ、東北や南九州は縄文人の特徴が強く、四国や近畿は渡来人の特徴が強く出たのだという。中でも滋賀県は最も渡来人の要素が強いのだそうだ。
渡来人というのは古代に朝鮮半島から渡ってきた人々のことで、日本列島に稲作や文字文化を伝えた。滋賀県の主な渡来人集団には、湖東地方に定住して土地を開墾し、水田を開いた秦氏の一族と、湖南、湖西、湖北地方の湖岸に住んでびわ湖の湖上交通を支配した漢(あや)氏の一族がある。私が学校の歴史で渡来人について学んだ時は、渡来人というのは何十人かせいぜい何百人という程度だったのだろうと思い込んでいた。しかし広い湖東地方の山林や沼地を開拓して水田にするのにそれくらいの人数で足りるわけがない。おそらく何千人か何万人、あるいはそれ以上の数だったのだろう。
その後、混血が進んだ後も彼らの影響は強く残ったはずだが、不幸なことに明治以降の日本人は朝鮮人を差別し、渡来人の影響を過小評価してきた。現代でも日韓関係の緊張のため、そういう傾向がある。ところが私は最近、日野町で育った人に話を聞く機会があった。彼の話によると、彼の地方では小学生の頃から村ごとに百人一首の競技会があり、土地の人々は和歌や俳句をたしなむのだという。なぜそんなに文化レベルが高いのでしょうかと聞いたところ、彼は「この一帯は渡来人の血が濃いからでしょう」と答えた。この答えは意外で印象に残ったので紹介させていただいたわけである。
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