百億個の乳酸菌
「95%の人が、また使いたいと答えました」とか、「顧客満足度が1位になりました」などと、数字を使ったコマーシャルがたくさんあるが、私はそういうコマーシャルを信用しないことにしている。「95%」と言ったところで、何の95%か分からないし、もしアンケートの結果なら「また使いたいですか」と聞かれた回答者が相手に気を使って「はい」と答えることも珍しくないだろうからである。また、一般に数字は客観的だという信仰があるから、聞く人を煙に巻く効果もある。
青汁やヨーグルトなどで「100億個の乳酸菌を含んでいます」とPRしているものがある。100億個というのは途方もない数で「それは本当か?」と疑問に感じる人もいるだろうが、たぶん本当だろう。ただし人間の腸には大腸菌をはじめとしてビフィズス菌や乳酸菌など100兆個の細菌が住んでいるのだそうだから、100億個といえどもその1万分の1に過ぎない。また、口から摂取した飲み物は腸に届く前に強烈な胃酸の中を通らねばならず、その中で死滅する乳酸菌も多いようだから、その中のどれだけが腸に届くのかは分からない。
だから、日常生活の中での100億と言えば途方もなく大きな数(日本の人口の100倍)だが、生物学的に見た場合、それが多いか少ないかは単純には判断できない。それを判断するには、乳酸菌が腸の中でどんな働きをするのか、それが効果を表すにはどれだけの数が必要なのか、どんな種類の乳酸菌が胃酸の中で生き残るのかなど、相当な専門知識が必要だが、普通の人間はそんな知識を持ち合わせてはいない。その普通の人間に向かって「100億個の乳酸菌」というコマーシャルをするのは、数字の持つ権威の悪用と言うべきだろう。
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