「指導」ということば
私はことばの意味をそのことばに使われている漢字の意味から説明するのは間違いだと思っているが、「指導」ということばに関してはその漢字の通り、「指し示して導くこと」だと思っている。念のために、今回いくつかの国語辞典で調べてみたが、どれも同様の説明がされている。ところが、社会ではかなり違った意味で使われていてとまどうことがある。
もうずいぶん古い話だが、私が教師になった直後、生徒指導の先生から「○○君は髪の毛が長いので、切ってくるように指導してください」と言われた。そこで私はその生徒に髪が長すぎると注意したのだが、強く叱ったわけではない。当時は長髪が流行っていて、私は「彼はすぐには髪を切らないだろうから、この指導は何ヶ月もかけての長丁場になる」と思っていたのだった。
ところがその数日後、私は生徒指導の先生から「○○君が髪を切るように指導しなさいと言ったのにそのままじゃないか」と叱られたのである。私は「自分は指導しているの……」と心外で、その先生がなぜ怒っているのかはさっぱり分からなかった。それでも、やがて、その先生が「指導する」というのは、「命令して従わせる」という意味だったことを知り、教育現場ではそれが常識なのだということも知ったのだった。
他にも、「指導」ということばが、「命令」と同じ意味で使われることがよくあるようだ。「行政指導」などもその一例だろう。また、柔道の試合で「指導」を3回受けた選手は負けになる。本来、「指導」というのは前向きなアドバイスを意味することばのはずなのに、マイナスの意味を持つ判定用語として使われているのだ。世界の人々はとまどっているのではあるまいか。
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