トンビとアドバルーン
朝、ゴミ出しを終えてふと空を見上げると、トンビが輪を描いて飛んでいた。その飛び方が実にみごとなのだ。まったく羽ばたくことなく、直径15~20メートルくらいのほぼ正確な円を描いて、何度も何度も同じところを旋回しているのだ。両側へまっすぐに羽を伸ばし、少し内側へ体を傾けて滑空している様子は、軽飛行機がカーブしている時と変わらない。
高さは地上2~30メートルだろうか。その下は住宅の屋根のはずだ。それを見ていてふと疑問が湧いてきた。あのトンビがどうして一定の高度を維持していられるのだろうかということだ。羽根を広げていれば飛行機と同じで揚力が生じるのは分かる。でも、空気中を飛んでいれば空気の抵抗によって速度が落ちるはずで、そうなれば揚力も小さくなって高度が下がるはずである。普通、鳥はそうなれば羽根を羽ばたいてまた上空に昇るものだ。ところが、私が見ていたトンビには全くそんな様子が見られなかったのである。
あのあたりに上昇気流があるのだろうかとも思った。でも、空は曇っていて地面や屋根が太陽光で暖められているわけではないから、そんな上昇気流がありそうにも思えなかった。それに、空気抵抗を受けているはずなのに速度が落ちない理由も分からない。
そんなことを考えながらトンビを見ているうちに、遠くの空にアドバルーンが上がっているのを見つけた。その文字は読めなかったが、そちらの方向でドラッグストアーが開店したはずで、そのアドバルーンらしい。
トンビもアドバルーンも、久しぶりだ。最近の若者はアドバルーンという言葉も知らないかもしれない。何十年か昔にタイムスリップした気分になったのだった。
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