水撒けば
水撒けば トカゲとびだす 蝶が舞う
私の家はシラカシの生け垣に囲まれていて、庭にはトネリコなど何本かの樹が植えてあるので、夏の朝はこれらの樹に水をやることにしている。木の根本あたりは手入れが行き届いていないので、たくさんの雑草が生えていて、そこにホースで水を撒くと、何匹ものトカゲが驚いたように飛び出し、草の葉にとまって羽根を休めていたらしい蝶が舞い上がる。トカゲは素速い動きでどこかへ逃げていくが、蝶は水撒きが終わったらまた元の草に戻ろうとしているのか、しばらくは周囲を飛び回っている。そんな情景を詠んだのが冒頭の句である。
それは私にとって楽しい時間である。毎日のことなので、トカゲがとびだすのも蝶が舞い上がるのも分かった上で、わざと勢いよく水をかけるのだ。しかし、もちろんトカゲにも蝶にも危害を加えるつもりはないし、追い払うつもりもない。それは私と動物たちとのゲームのようなものなのだ。このときだけは私とゲームを楽しもう、でもゲームが終わったら、また戻ってきてゆっくりとここで過ごしてくれたらいいと思っている。
トカゲや蝶だけではない。真夏になるとトネリコの幹にびっしりとセミがとまる。幹に5センチ間隔くらいでセミがとまって羽根を振るわせて耳を聾するような声で鳴く。あまりにも多いので、一体何匹いるのだろうと思って、去年、トネリコの樹に水をかけて飛び立つセミの数を数えたら50匹以上いた。これだけのセミが一斉に鳴くとさすがに迷惑だが、それでも我慢するしかないと思っている。このセミたちは長い間土の中で暮らしてようやく地上に出てきたのだから。それに、朝、脱皮する時には美しい緑色の姿を見せてくれるのだから。
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