井戸謙一さん(1)
彦根市内で弁護士事務所を開いている井戸謙一さんはもと裁判官で、2011年に退官して弁護士になったという。裁判官時代には金沢地方裁判所の判事として志賀原子力発電所2号炉の運転差し止め判決を出して全国的に注目された。そして、弁護士になってからは湖東記念病院の人工呼吸器事件で有罪判決を受けて懲役刑に服し、刑期を終えていた西山さんの再審請求裁判の弁護団長を務めて、2017年に大阪高裁で、その後は最高裁で再審開始決定を勝ち取った有名な弁護士である。
2015年、袴田事件の再審問題がマスコミをにぎわせていた頃、私は「この人に会いたい」というラジオ番組で刑事事件の裁判や冤罪事件について話して欲しいと、井戸さんにインタビューの申し入れをした。そのとき私は、もと裁判官という立場上、井戸さんには話しにくいテーマだろうから断られるかもしれないと、「ダメもと」のつもりで申し入れをしたのだったが、井戸さんは気軽にインタビューに応じてくれたのだった。
そのインタビューの中で、私は「裁判官として最も大切なことは何ですか」と聞いた。すると井戸さんは躊躇なく、「たとえ10人の真犯人を取り逃がすことになったとしても、1人の無辜(罪のない人)を罰してはいけない」ということだと答えてくれた。これは、被告人に対して生殺与奪の権を持つ裁判官はそれだけ慎重でなければいけないという格言で、裁判の大原則なのだろうけれど、長年、司法といういわば官僚世界の中にいた人から、このような「青臭い」言葉が聞けたことに私は感動した。ある雑誌に「自分が正しいと信じることをそのままに」というのが井戸さんのポリシーだと書いてあったのが、なるほどと納得できた次第である。
核の傘から出よう 井戸謙一さん(1) 井戸謙一さん(2) 夏近し
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