絶妙な数字
私は4年前に悪性リンパ腫にかかって入院し、抗ガン剤の治療を受けた。ステージⅢということで、入院した当初は不安だったが、さいわい治療は順調に進み、20日ほどで寛解という診断を受けた。ガンの場合、治癒とか完治とかの診断はなく、寛解というのだそうだ。退院した後は定期的に腫瘍マーカーと簡単な診察を受けているが、現在のところ再発の兆候はない。
ところで、退院する時、私は主治医の先生から「あなたのような場合の5年生存率は87パーセントです」と言われた。この数字はガンの種類や患者の年令、治療経過などから割り出された客観的な根拠のある数字なのだろうが、この数字を聞いた時、私は絶妙な数字だと感心したものだ。まず第1に、87パーセントなら、「まず大丈夫だろう」という安心感を患者に持たせることができる。これはすごく大事なことなのだと思う。しかし、逆に言えば死亡するケースも13パーセントあるということだから、安心しきってしまわないで、これからも定期的に検査を受けなさいよというメッセージも込められているのだろう。絶妙というのは、そういう意味だ。
主治医の先生がわざわざこういう数字を私に教えてくれたのは、そのような配慮があってのことだろう。これがもし10パーセントや20パーセントなら、絶対その数字を口にしなかったに違いない。そういう判断ができる人が名医なのだ。もしかしたら私がこのように考えて、その先生への信頼感を増すことさえも、計算に入っていたのかもしれない。
あと8ヵ月で私は寛解から5年になる。今、私は自分も87パーセントの方に入ることができるだろうと期待している。でも、その先は分からない。
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