俳句の解釈(2)
麦秋や 明日はきちんと 愛告げる
この句は伊藤園の「おーいお茶」のラベルに、「新俳句大賞」の一つとして掲載されていたものである。新俳句大賞に選ばれている句は、俳句と呼ぶに値しない幼稚なものや、現代俳句風の難解な句が多くて、私はあまり評価できないことが多いが、この句は秀逸だと思う。「愛告げる」、これは今風に言えば「告白する」ということだが、こういう軽いことばを使わず「愛告げる」と言ったところや、慣習的な文語調のことばを使わず、「きちんと」という日常語を使ったところに、作者の強い思いが感じられる。季節は麦が稔る梅雨の頃だ。
稲が実る時は田んぼ全体が明るい黄金色になり、とても華やかな雰囲気になる。ところが、麦の穂は黄色を基調としながらも焦げ茶色の色彩も混じっているので麦秋の麦畑はそれほど華やかではない。特に雨が降っている時などは暗く沈んだ色調にすら見える。私はこの句を読んだ直後にそんな麦畑の間を走っていて、落ち着いた色調の麦畑を見ながら、この句を詠んだ女性の「明日はきちんと愛告げる」という凛とした決意に感動したのだった。そしてその後、私はこの句を思い出すたびに雨に濡れてやや暗い麦畑を連想していた。
ところが、2,3年後、よく晴れた日に麦畑の中を走っていた時、不意にこの句を思い出した。このとき、太陽の光を浴びた麦畑は黄色く輝き、空は明るい青色をしていた。それを見ながら麦秋というのはこういう明るい活力にあふれた時期でもあるのだと感じ、あの句はこういう風景を見ながら自分のあふれるような思いを詠んだ句かもしれないとも思った。実際、どちらかは分からない。でも、どちらにもとれる、それが俳句なのだ。
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