春が来た
ここ一週間ほど晴天続きで、明るい春の日射しが降り注いでいる。空は多少かすんでいるようにも見えるが、目につくような雲もなく、古い言い方をすれば「日本晴れ」の毎日である。私が春の訪れを実感した一番の理由はこの明るい日射しだが、もう一つは私の家の周辺に漂う無数の羽虫である。
私がそれに気づいたのは2月27日のことだった。夕方前、玄関を出てみると西日に照らされて何百、何千匹の羽虫がまるで蚊柱のように空気中に浮遊していたのだ。大きさは1ミリか2ミリ、生ゴミに湧くショウジョウバエくらいである。ただし、ショウジョウバエの場合は黒っぽいのでよく目立つが、この羽虫の胴体は薄茶色、羽根はほぼ透明で、夕陽に照らされなければ見えない。このときも日陰になった隣家の壁を背景にすると明るく浮き上がって見えたが、青空を背景にすると、空にとけ込んで全く見えなくなるのだった。
その動きは、まるで空気の流れに身を任せているかのようで、上下左右にフワフワと浮遊していた。この多数の羽虫はどこでどんなふうに生まれたのだろうか。おそらく卵が木の幹などで冬越しをして、一斉に羽化したのだろうが、私はその卵のようなものを見たことがない。それもそのはず、成虫でもこんなに小さいのだから、卵は肉眼では見えないほどの大きさだったに違いない。私たちにとっては、不思議の国からの来訪者だ。
でも、それが春というものだと私は思った。私たちは雑草が芽吹いて、鳥が鳴いて……と、春についてのそれなりのイメージを持っている。でもそれは自然の変化のごく一部なのだ。私たちが知ろうと知るまいと、この世界全体で春の壮大な営みが始まっているのである。
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