霧の朝
今朝、外に出てみて驚いた。霧で周りが真っ白なのだ。4、50メートル離れたところにある神社の森は薄いシルエットにしか見えない。その手前にある家は、かろうじて窓があることが分かるのだが、これも全体としてみればシルエットだ。路地をはさんだ民家の壁は昔の焼板風に黒塗りされていて、それを背景に見ていると無数の細かい水滴が時には下向きに、時には斜め向きに落ちていくのが見えた。粉雨とでも呼ぶべきだろうか、こぬか雨より、霧雨より細かい。風もないのにその方向が気まぐれに変わるのが不思議だ。
我が家はシラカシの生け垣で囲まれているのだが、白っぽい無彩色の世界の中で、目の前のシラカシの葉の緑色はなまめかしいほどに鮮やかだった。
周辺はいつになく静かだ。霧は音も吸収するのだろうか。ただ、どこか遠くでカラスの鳴き声がする。そして、どこからかポクポクポクポクと木魚のような単調な音が聞こえてきた。でも、こんな音は今まで聞いたことがないし、この付近のお寺は浄土真宗だから木魚を叩くことはないはずだ。これは何の音か、どこから聞こえてくるのかを探ろうと思って門の外に出たのだが、やがてその音は途切れた。家の外の道はコンクリートで舗装されている。粉雨が絶え間なく降り注いでいるのだから、その道はしっとりと濡れているだろうと思っていたのだが、意外にもコンクリートは白っぽく乾いていた。
私がタバコを吸っていると、犬の散歩をさせている女性がそばを通りかかった。彼女は私に軽く会釈をし、私も会釈を返したのだが、犬はまるで私が見えていないかのように私を無視して歩いていった。そして、犬と女性はやがて霧の路地に消えていったのだった。
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