リアルな防衛論議を
ロシアによるウクライナ侵攻、北朝鮮によるミサイル発射、中国の海軍力増強などを受けて、日本も防衛力を増強すべきだという認識が国民に浸透しつつある。その具体的内容として、敵基地攻撃能力とか、反撃能力ということも言われているが、どちらも具体的な戦闘状況を想定しないまま、「やられる前にやっつけろ」とか「やられたらやり返せ」というような情緒的な論議に終始しているように思われる。
たとえば、敵基地攻撃能力という場合、ミサイルはどこかの地上基地から発射されるという前提に立っているように思われるのだが、潜水艦から発射される巡航ミサイルにはどう対処するのか。まず第1に潜水艦の位置を探知するのが難しいし、その潜水艦がミサイル発射を準備しているかどうかも分からない。そしてその潜水艦を攻撃する方法もない。しかも、近海から発射された巡航ミサイルは秒単位で着弾するのだ。
さらに、軍備増強論者の多くが原発推進論者なのも奇妙な点だ。もし海岸沿いの原発がミサイルで破壊されたらその放射能は日本全土に広がる。その危険は福島原発の事故で誰もが理解しているはずなのに、この問題は論議されていない。実際に原発が攻撃されなくても、「原発を攻撃するぞ」と脅かされれば、戦わずしてギブアップするしかないのに、である。
もしかしたら原発はミサイルにも耐えられるほど頑丈に作られているというのかもしれないが、それは違う。仮に原子炉本体はそれくらい頑丈だったとしても、コントロールルームや送・受電設備、冷却水の取水口が破壊されれば、原子炉は暴走して大事故になる。そういうことすら理解しない防衛論議は論議と呼ぶに値しない。
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