松本修さん(2)
高校時代、抜群の成績でクラスの人気者でもあった松本君は京大の法学部に進んだ。でも、活発な松本君が法律書に囲まれている姿は私には想像できなかった。だから、なぜ法学部を選んだのか聞いてみたい気もしたのだが、在学中は一度も彼と接触する機会がなかった。そして彼が放送局に入社してテレビディレクターをしていると聞いたのは大学を卒業してしばらく後のことだった。
彼はラブアタックという人気番組を作っていたのだが、その番組には彼が大学時代に交流していた多くの大学の若者が出演していたそうで、なるほどそれならと納得したものだった。そしてこの番組では魅力的な女性を「かぐや姫」と名付けていたのだが、これはまさに松本君のセンスだと思った。そしてその次の「探偵ナイトスクープ」では、スタジオのセットをシャーロック・ホームズの事務所に似せて、19世紀の英国調にしたというのだが、これも松本君らしいアイデアだった。
松本君自身が企画・制作したこの番組では数々の名作が生まれたが、最大のヒットは近畿地方では「アホ」と言い、関東では「バカ」というその言葉の境界がどこにあるかを探るという企画だった。視聴者や教育委員会を対象とする調査でそれを探るうちに、「アホ」や「バカ」だけでなく、「タワケ」や「ホンジナシ」などの言い方があって、それらは京都を中心に同心円状に分布していることを見いだしたのである。これは「方言は京都で生まれた都ことばが時間をかけて地方に伝わってきたものだ」という柳田國男の「方言周圏論」を実証したものだと彼は考えて、「全国アホバカ分布考」という本を書いた。それは、大衆の中に物事の核心を見ようとするもので、まさに松本君の本領を発揮したものであった。
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