山野稔さん
先日、私は「この人に会いたい」というラジオ番組の取材のために、シグマックスという会社の山野稔さんを訪ねた。山野さんの会社は工場などの高温の環境下でも使えるセラミックス製のバーコードラベルを作っていて、世界中の有名企業と取引関係がある。セラミックスを使ったバーコードラベルというのは山野さんの着想で、それを実現させたのは山野さんの技術力だった。
ところで、この山野さん、実は私の高校時代の同級生なのである。理系科目が得意だった山野さんは高校で物理実験同好会というのを作っていて、私もそれに加えてもらっていたのだ。このグループはロケットを作って飛ばしたり、様々な物理実験を行ったりしていたが、その中で私が忘れられないできごとがあった。
ある時、私たちは時間を精密に測定すべき実験をした。時間を計るにはストップウォッチがあるが、それでは誤差が大きすぎる。そこで彼が考案したのは、フェノールフタレンを加えた食塩水で湿らせた布の上で、交流電圧をかけた二本の金属棒をスライドさせるという方法であった。こうすると負極の金属棒の周囲に水酸化ナトリウムができるので、電極がマイナスになるたびに赤い斑点ができて、それが点々と連なるのである。電極は60分の1秒ごとに正負が入れ替わるので、赤い斑点の数を数えれば120分の1秒単位で時間を測定できるのだ。
私も食塩水の電気分解については知っていた。でも、それは試験のために暗記した知識に過ぎず、まさか時間を計るためにそれが応用できるなどとは思ってもみなかった。私も物理は得意科目ではあったが、このときは完全に山野君に負けたと思った。そういう山野君の天才がシグマックスを成功させたのだろうと思う。
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