マスク美人
3年前、新型コロナの流行が始まった頃、私はまだ時間講師として高校へ教えに行っていた。 そんなとき、教室にいる生徒たちがみんなマスクをしている姿を見ると、何か得体の知れない不気味な集団と感じたものだ。 長年高校教師をしていて、素顔の高校生を見慣れていた私には異様に感じられたのである。 当時の私は高校へ授業に行く以外は人の集まるところに行く機会はなかったし、公共交通機関を利用することもなかったが、もしそういう場に行けば同じように感じたことだろう。
ところが、いつしか私もマスクをした人間集団になれてしまった。 それどころか、若い女性など、マスクをして目のあたりだけ出している方が美人に感じられるようになったのである。 数ヶ月前、何度かテレビニュースに登場したマスク姿の女性が、ものすごい美人に見えた。 「涼しげナな目の美人」などということばがあるけれど、それはこういう人を言うのかなと思ったほどだ。
人間の慣れというのは恐ろしいもので、慣れてしまえばそれが自然なことになる。 そして、それは見る側よりもむしろ見られる側の人にとってより微妙で重大な問題だと思う。 最近テレビのニュースで3年間マスク姿で過ごしてきた高校生達が、卒業の記念撮影でマスクを外すことに抵抗感があるという話を聞いた。 たぶん彼ら、彼女らにとって素顔をさらすことは究極のプライバシーをさらすことだと感じられるのだろう。
このことを考えていて思い至ったのが、イスラム圏の女性のヒジャブのことである。 ヒジャブが女性の人権を抑圧するものだという主張にも一理はあるが、それは同時に女性の人権を守るものでもあり、さらには女性の魅力をアピールする手段でもあるのだろう。
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